脂質を改善するには、食生活と生活習慣 ― 「質」と「バランス」で整える体内のめぐり

健康コラム

健康診断で「脂質異常症の疑いがあります」と告げられたとき、何を思いますか?「脂っこいものを食べすぎたかな」「運動不足かも」と、心当たりがある方もいれば、特に思い当たることがないのに数値が高くて驚いた、という方も少なくありません。

脂質は私たちの体にとって大切なエネルギー源であり、ホルモンや細胞膜の材料にもなる重要な栄養素です。しかし、過剰または偏った摂取、あるいは生活習慣の乱れが重なることで、血液中の脂質バランスが崩れ、健康リスクを高めてしまうことがあります。

今回は「脂質異常症」を予防・改善するために、食生活と生活習慣の両面からアプローチする方法を、コラム形式でご紹介します。


脂質異常とは?バランスの崩れがリスクになる

脂質異常症とは、血液中の脂質(主にコレステロールと中性脂肪)の値が正常範囲を超えている状態を指します。具体的には、以下の3つのいずれか、あるいは複数が当てはまると診断されます。

  • LDL(悪玉)コレステロールが高い
  • HDL(善玉)コレステロールが低い
  • 中性脂肪(トリグリセリド)が高い

これらの異常が続くと、動脈硬化が進行しやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気のリスクが高まります。しかし、逆に言えば、日々の食事や生活習慣を見直すことで、これらの数値は着実に改善できるのです。


脂質を改善する食生活のポイント

1. 「脂質を抜く」より「良質な脂を選ぶ」

脂質異常というと、「脂質=悪」ととらえがちですが、脂質は完全に避けるべきものではありません。大切なのは、脂の“質”を見直すことです。

  • 避けたい脂質:飽和脂肪酸やトランス脂肪酸
     肉の脂身、バター、ラード、加工菓子、揚げ物に多く含まれるこれらの脂は、LDLコレステロールを増やす原因になります。
  • 積極的に摂りたい脂質:不飽和脂肪酸(オメガ3・オメガ9)
     青魚(サバ、イワシ、サンマ)、亜麻仁油、えごま油、オリーブオイル、アボカド、ナッツ類に含まれる脂は、善玉コレステロールを増やし、中性脂肪を減らす働きがあります。

2. 食物繊維をしっかり摂る

野菜、きのこ、海藻、豆類、穀類に含まれる食物繊維は、コレステロールの吸収を抑えるとともに、腸内環境を整える効果もあります。特に水溶性食物繊維(オートミール、大麦、納豆など)は、血中脂質の調整に効果的です。

3. 糖質・アルコールも見直す

中性脂肪が高い場合、脂そのものよりも「糖質過多」が原因であることも。白米、パン、菓子類、甘い飲料などの摂りすぎは、中性脂肪の増加につながります。また、アルコールは肝臓で中性脂肪に変換されやすく、飲みすぎには注意が必要です。

4. 食事のリズムを整える

食事の時間が不規則になると、脂質の代謝にも悪影響を及ぼします。朝食を抜く、夜遅くに大量に食べるといった習慣は避け、1日3食をできるだけ同じ時間に摂ることが理想です。


脂質を改善する生活習慣の見直し

1. 有酸素運動を習慣にする

ウォーキング、ジョギング、自転車、水泳などの有酸素運動は、HDL(善玉)コレステロールを増やし、LDLや中性脂肪を減らす効果があります。1回30分、週3〜5回を目標に、無理なく続けられる運動を取り入れましょう。

2. 禁煙を実行する

タバコを吸うと、善玉コレステロールが低下し、動脈硬化の進行を早めるといわれています。脂質異常が気になる人にとって、禁煙は非常に重要な対策です。

3. 質のよい睡眠とストレスマネジメント

睡眠不足やストレスの蓄積は、ホルモンバランスを乱し、脂質代謝にも影響を与えます。7時間前後の質の良い睡眠を確保し、趣味やリラックスタイムを大切にして、心身の安定を図りましょう。


数値の改善は、コツコツとした積み重ねから

脂質の数値は、一朝一夕に大きく変わるものではありません。しかし、日々の食事と生活の中で「質の良い脂を選ぶ」「適度に体を動かす」といった基本的なことをコツコツと積み重ねていけば、数ヶ月単位で確かな変化が現れてきます。

外食が多い人は週に1〜2回、自炊の日を作ってみる。通勤の一駅を歩いてみる。おやつにスナック菓子ではなくナッツを選ぶ。こうした小さな選択が、未来の健康をつくる大きな一歩になります。


まとめ ― 脂質の見直しは、「暮らし方の見直し」

脂質異常の改善とは、単に数値を下げることだけを目指すのではなく、自分自身の「暮らし方」と丁寧に向き合うことでもあります。バランスよく食べ、体を動かし、心を整える。そんな生活習慣の積み重ねが、体の中のバランスを整え、健康な毎日へとつながっていきます。

今の自分を責めるのではなく、未来の自分のために、できることをひとつずつ始めていきましょう。脂質との向き合い方は、人生との向き合い方に通じているのかもしれません。

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